『万引き家族』雑感



好きな言葉に、近代経済学の祖アルフレッド・マーシャルの"Cool Head, but Warm Heart"がある。冷静な頭脳と温かい心、どちらか一方でもダメなのだ。

以前、学生の映像作品にアドバイスする番組を見ていた。冷静で的確であってそれでいて、温かみのある意見を出す人がいたのが印象に残っている。それが是枝裕和監督だった。そして、映画にもそういった雰囲気が出ている。

ドキュメンタリータッチのような淡々とした描写が続き、ときには冷徹な描写もありながら、それでいて温かみがある、どこか和むようなところがある。これがやはり監督の持ち味だと思う。

『万引き家族』もまた、そうした監督の持ち味が遺憾なく発揮された作品だった。 
社会派の映画でありながら、社会に問うてやろうみたいな自意識は徹底して省かれ、全面には出てこない。場違いな正論や説教が響かないように社会性だとか政治的メッセージを強く盛り込んだとしても映画が面白くなるどころかかえって興ざめする場合もあるのだと、分かっているからであろう。

犯罪や虐待などの繊細な題材であるので必然的にエンタメにも、お涙頂戴のような単純な話にもならない。だからといって、難解すぎるわけでもつまらないわけでもない。会話の端々はところどころ笑えるし、感情の形容しづらさに頭抱えてほしい。




以下ネタバレ注意


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Oneshot やさしいメタゲーの名作


とにかく主人公のニコがかわいい。

ニコは健気な8歳前後の性別不明な子どもだ。
場面場面で美しい挿絵によって、より愛着が湧く。
Niko_pict

滅びゆく退廃的な世界で、ニコとともに世界を救えるか…
そして、ニコを無事に家まで届けられるか…

パズルアドベンチャーと呼ばれるストーリーがメインのジャンルで、戦闘やアクションは一切ない。
そのため、ゲームが苦手でも遊べる。2周遊んでも10時間以内で終わるボリューム。

唯一のゲームらしい要素であるパズルは難しくはないもの、変わっていているのでちょっと戸惑うかもしれない。どうしても行き詰まったら攻略を検索しても問題ない。

「moon」や「ゼルダの伝説 夢を見る島」が好きな人はハマるはず。
ゲーム要素が少なく削ぎ落とされている分、ダイレクトに来るものがあると思う。


なるべく予備知識がないほうが楽しめるゲームで、まずは買って遊びましょう。
今ならセール中!


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映画『パターソン』淡々とした日常の中の排他性のない豊かな世界

 

しがないバスの運転手で毎日詩を書き留めることが趣味のパターソンの一週間を描いた作品だ。
バスジャックが起こるわけでも激しいアクションがあるわけでもない。

しかし、毎日同じようで違う。何にもない日もあれば、ちょっとした事件もある。

舞台はニュージャージー州のパターソン。
と聞くと中々イメージしづらいが、ニューヨーク州のすぐ南にあるところだ。
早くから工業化が進んで移民が多く住んでいる。しかし、工場の海外移転や郊外のショッピングモールで空洞化の進んだ貧しく寂れた街だ。

バス運転手のパターソンも金銭面では豊かとはいえない。
しかし、愛する妻がいて、愛犬がいて、散歩途中の行きつけのバーでの一杯、あとは詩とマッチと滝があれば充実した生活なのだ。

エンタメ度は低いので人を選ぶ作品だが、好きな人にはこの静寂で温かい作品を愛おしく感じるだろう。
創作する人や、淡々とした日常が好きな人にはおすすめできる。

妙に気取った感じもなく、説教臭くもなく、内省的でもなく、排他的でないところがいい。


以降は若干ネタバレ


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