好きな言葉に、近代経済学の祖アルフレッド・マーシャルの"Cool Head, but Warm Heart"がある。冷静な頭脳と温かい心、どちらか一方でもダメなのだ。

以前、学生の映像作品にアドバイスする番組を見ていた。冷静で的確であってそれでいて、温かみのある意見を出す人がいたのが印象に残っている。それが是枝裕和監督だった。そして、映画にもそういった雰囲気が出ている。

ドキュメンタリータッチのような淡々とした描写が続き、ときには冷徹な描写もありながら、それでいて温かみがある、どこか和むようなところがある。これがやはり監督の持ち味だと思う。

『万引き家族』もまた、そうした監督の持ち味が遺憾なく発揮された作品だった。 
社会派の映画でありながら、社会に問うてやろうみたいな自意識は徹底して省かれ、全面には出てこない。場違いな正論や説教が響かないように社会性だとか政治的メッセージを強く盛り込んだとしても映画が面白くなるどころかかえって興ざめする場合もあるのだと、分かっているからであろう。

犯罪や虐待などの繊細な題材であるので必然的にエンタメにも、お涙頂戴のような単純な話にもならない。だからといって、難解すぎるわけでもつまらないわけでもない。会話の端々はところどころ笑えるし、感情の形容しづらさに頭抱えてほしい。




以下ネタバレ注意


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