今年はアニメ映画は豊作揃いで、「この世界の片隅に」と並ぶ傑作です。
今年と言うくくりすらいらないかもしれない。
多くの人に観てもらいたいです。

予告で美しいアニメーションと音楽に惹かれました。


ソング・オブ・ザ・シー 海のうた 公式サイト

あらすじ

母からたくさん歌やお話を聞いて育った兄ベンは、妹シアーシャの誕生を機に海へ姿を消した母を妹のせいだと思っていじわるをしてしまいます。言葉の話せないシアーシャ6歳の誕生日に光に導かれるまま妖精のコートを見つけ、海へ入っていきました。母のようにどこか消えて行ってしまうと思った父はコートを海に捨て、兄妹二人は嫌々おばあさんのいる都会に引っ越すことに。

ハロウィンの日、我が家に帰りたくて飛び出した兄妹は妖精と出会い、母から聞いた伝承と忘れ形見の貝笛を頼りに兄妹の冒険が始まります。

雑感

この作品の舞台はアイルランドで、話の元となるのはアイルランドの神話です。
基本的に文字を持たない人たちでもっぱら神話は口頭伝承で、多神教で自然崇拝をしてました。

ハロウィンは元々アイルランド(ケルト)の風習で、10月31日は、
一年の終わりと始まりの境界、夏の終わりと冬の始まりの境界です。
この時期は霊界と現世の境界があいまいになると信じられていて、先祖の霊とともに悪い妖精や魔女がやってくるのでかがり火を焚いたり仮面をかぶったりして魔除けをしていました。

本作の主題歌は劇中でもたびたび流れ、話の中核となる美しい歌です。
劇中ではゲール語(アイルランド語)で歌われてますが、英語の歌詞だと

Between the here, Between the now.
Between the north, Between the south.
Between the west, between the east.
Between the time, between the place.

このあともBetweenがよく出てきます。
これは日本語なら二点の「間」(あいだ)を意味する言葉です。

まさに霊界と現世の境界があいまいになる日の間の話ですし、シアーシャも人間とセルキーの間の子です。シアーシャの歌は分断された感情と本体の間をつなぐような役目を果たします。

一方で犬のクーをつなぐ紐で物理的に兄妹はつながってましたが、心で繋がってません。
最後には兄はいままでのいじわるを反省し、絆で結ばれます。
アイルランド・ゲール語でシアーシャ(
Saoirse)は自由を意味します。境界に縛られる存在ではないんでしょうね。

もっと神話と生活が近かった頃の思い起こしますし、今のような断絶の時代にこそ心の打つテーマではないでしょうか。

監督は息子と海岸へスケッチ行ったら、大量にアザラシの死骸が打ち上げられていて驚いたそうです。
漁の邪魔になるアザラシは殺される。アイルランドでは精霊として大事にされてきた存在であったのに。そこからこの映画を着想したそう。
急速な発展に伴って置き土産のように忘れていった土着の宗教や風習、神話を美しい映画の中に蘇らせました。

経済成長批判のような刺々しいものはなく、ただ母ブロナーが優しく歌うように物語は紡がれていきます。そこがとても良かったです。