映画

映画『パターソン』淡々とした日常の中の排他性のない豊かな世界

 

しがないバスの運転手で毎日詩を書き留めることが趣味のパターソンの一週間を描いた作品だ。
バスジャックが起こるわけでも激しいアクションがあるわけでもない。

しかし、毎日同じようで違う。何にもない日もあれば、ちょっとした事件もある。

舞台はニュージャージー州のパターソン。
と聞くと中々イメージしづらいが、ニューヨーク州のすぐ南にあるところだ。
早くから工業化が進んで移民が多く住んでいる。しかし、工場の海外移転や郊外のショッピングモールで空洞化の進んだ貧しく寂れた街だ。

バス運転手のパターソンも金銭面では豊かとはいえない。
しかし、愛する妻がいて、愛犬がいて、散歩途中の行きつけのバーでの一杯、あとは詩とマッチと滝があれば充実した生活なのだ。

エンタメ度は低いので人を選ぶ作品だが、好きな人にはこの静寂で温かい作品を愛おしく感じるだろう。
創作する人や、淡々とした日常が好きな人にはおすすめできる。

妙に気取った感じもなく、説教臭くもなく、内省的でもなく、排他的でないところがいい。


以降は若干ネタバレ


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映画『ダンケルク』映画を見る前の予備知識と感想

映画を見る前に3点

  1. 音響と映像で魅せる映画なのでIMAXで観るのをオススメ。通常だと上下カットされる。
  2. 激戦の映画ではなく撤退戦映画。陸1週間、海1日、空1時間と時間軸がズレるので注意。
  3. 事前に予備知識入れておくとすんなり映像体験を楽しめると思う

映画の状況説明が最小限で没入感の高い作品である一方、ダンケルクの特殊な状況やドライな作風に戸惑うこともあるので、ここは事前の知識があれば円滑に理解できて作品にすんなり没入できると思う。
なのでダンケルクの予備知識を書く。

まず、ダンケルクの戦いは総力戦でも泥臭い戦いでもない。ドイツ軍が本格的に攻め込んではこない。そして、それはなぜなのか。

ダンケルクの撤退以前

ことの発端を話すと長くなるのでかいつまんで。

1939年の9月1日 ポーランド侵攻を発端に第二次世界大戦に突入。英仏はポーランドに相互援助条約があるためにドイツに対して宣戦布告するが、ポーランドに軍事支援はせずに静観。
英仏は宥和路線であったのと独はポーランド戦の勝利をエサに講和に引きずり込むつもりだったのと、戦争に備えて軍備の拡張を行っており、開戦したものの交戦せずに膠着した状態が続く。

1940年4月9日
独、対英仏海路の確保のため中立国であるデンマーク・ノルウェー侵攻。
英、ノルウェーに派遣するものちに撤退。ただしドイツ海軍は痛手を負う。→ドイツの艦艇はダンケルクに派遣できなくなった

5月10日 西方電撃戦
英、ノルウェーでの敗戦の引責で宥和路線のチェンバレン首相が辞職。
代わりに徹底抗戦派のチャーチルが首相の後任に決定。

独、オランダ・ベルギー侵攻。同時にフランスへの侵攻作戦も開始。

ドイツ国境との隣接部にマジノ線と呼ばれる要塞群を準備しており、ベルギーの西部国境沿いに連合軍を展開することで盤石の備えと思われたが…

戦車での突破不可能と思っていた天然の要衝であるアルデンヌの森周辺は守りが手薄だった。
ABCと軍隊を分割し、A軍の機甲部隊(戦車+自動車でとにかく機動力がある)で森を強行突破する作戦に出た。

歩兵戦を想定していた連合軍は、機甲部隊の機動力の高さに混乱に陥り、A隊は次々に拠点の突破。
戦線が伸びきって反撃受けることを恐れた軍部上層は停止命令を出す。
しかし現場の指揮官であるグデリアンやロンメルは電撃戦は心理戦であり早さが勝負なことを心得ており、命令を無視して突進を続けていた。そして、英仏海峡まで到達する。
16日 背後に迫るA軍を知った、連合軍はパリへの退却を目指すが、A軍に阻まれ英仏海峡方面に後退する。

Dnkirkmap1

5月21日-24日 アラスの戦い
英仏軍はロンメルの部隊に横槍を刺す形で反撃に出る。
最初こそ優勢だったものロンメルの起点で逆転。
英仏での連携不足で攻撃タイミングがズレたり、ドイツ航空支援を前に撤退を余儀なくされた。

奇しくもこの戦いでの勝敗がダンケルクの戦いの明暗を逆に分けた

この戦いで敗走したためイギリス側は撤退を決定。

ドイツ側は軍上層部が恐れていた伸びすぎた戦線での反撃であった。
今後も反撃が続くと予想を立てて消極的になり、24時間の攻撃停止命令がくだる。
このすきにダンケルクの防衛強化と撤退準備が進み、結果的に撤退作戦の成功への一歩となるのだった…

5月24日-26日 独攻撃停止命令により戦闘停止
独、圧倒的優位な状況にもかかわらず二の足を踏んでしまった。

Dnkirkmap2

ドイツの停戦理由

その後のフランス侵攻や背後にいるソ連戦のための温存という理由もあった。
戦車部隊の大半をA軍に使ってるので、これをむやみにつっこませて壊滅させられると後の作戦が展開できない。アラスの戦いで消極的な軍上層部と現場の指揮官であるグデリアンやラインハルトは突撃を支持して対立。仲裁としてヒトラーが攻撃停止命令を出す。
抗戦には貴重な機甲部隊を使うより歩兵と砲兵が向くのと、航空爆撃後に侵攻というセオリーどおりの展開にすることになった。

他の理由は空軍大臣のゲーリング(No.2)が空爆でいけると推したり、あるいは今後の和平交渉のためにやりすぎなかったとも言われる。

ダイナモ作戦

5月26日 ダンケルクからの撤退を目指すダイナモ作戦の開始
5月29日 ダンケルクからの撤退の開始。映画はここの話

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実際の写真です

空爆以外でのドイツの攻撃が激しくない理由は
・天候不順により霧が出て攻撃しにくかった。
・砂浜に爆弾が飲まれて思ったより爆撃の効果がでなかった。
・普段荒れ気味のドーバー海峡が穏やかで予想以上に撤退が速かった。
・スピットファイアなどの英新鋭機の投入で航空戦で想像以上に苦戦。

6月3日 イギリス軍撤退完了。
6月4日 ダンケルクの陥落。

ダンケルク撤退の余波

・チャーチルの政治家生命の存続。
就任直後の作戦を成功させ、ドイツ側の和平交渉を拒絶して徹底抗戦の路線を継続できた。
ダンケルクの撤退成功に湧いた国民と国家一丸となって立ち向かうことになる。
後のバトル・オブ・ブリテンの航空機の民間修理委託などが始まる。

もしダンケルクからの撤退を失敗だったのなら、国会も選挙も機能していたイギリスでは世論が傾いて降伏することもありえた。

・イギリスの装備品の不足
ほとんどの装備を捨てて撤退したため、深刻な装備不足に。3年は上陸できずになった。
国内が軍需産業に傾きすぎてその後のイギリス国力低下に。

・イギリスの人員の温存
のちの北アフリカ戦線やノルマンディー上陸作戦まで人員を温存することができた。

・フランスの敗走とドイツの勝利。世界情勢に大きく影響
イギリスが撤退した以上、フランスは抗戦する余力もなくあっさり降伏。

ヨーロッパで唯一ナチスドイツに抵抗したのがイギリスのみとなった。
フランスもドイツもイタリアもその他多くの国がヨーロッパ大陸から撤退したイギリスが降伏するものだと思っていた。日本もこのあとドイツが勝つと踏んで日独伊で同盟を結んだ理由の一つであった。

ダンケルク撤退その後

40年6月10日にイギリスの撤収後にはドイツに抗うだけの余力がないフランス政府のパリ放棄。漁夫の利を得ようとイタリアの参戦が決定。
6月21日フランス降伏。ドイツと休戦協定を結ぶ。

8月10日-10月31日 バトル・オブ・ブリテン。英仏海峡イギリス本土での英独航空戦。イギリスは防空予算は惜しげもなく使い当時最高の防空体制を整えてた。主力はスピットファイア。
独空軍は大陸運用を想定して飛行距離が短いのと、レーダーが貧弱なのもあって返り討ちにあう。ドイツはイギリス上陸作戦は諦めて、独ソ戦のほうに傾く。

9月27日 日独伊三国同盟
11月米ルーズベルトが大統領三期目。多額の戦債を出していたイギリスが負けると困ることと、いよいよナチスドイツの脅威が迫り参戦へ動き出す。
41年3月 米、武器貸与法成立し英・中国・ソ連へ明確に支援に乗り出す。事実上の参戦
41年12月8日 真珠湾攻撃 日米開戦。独・伊も対米宣戦布告し、米の本格的な参戦が始まる。
41年6月独ソ戦勃発。
42年8月 スターリングラード攻防戦
43年9月 イタリアの停戦と降伏
44年6月6日 ノルマンディー上陸作戦。ダンケルク撤退からちょうど4年後に西部戦線の復帰。
44年8月 パリ陥落。
45年5月8日 ドイツの無条件降伏でヨーロッパ戦争の終結
45年8月14日 日本の無条件降伏。

6年に及ぶ第二次世界大戦は終結。死者は5000万人以上とされる


以下後半部分は映画本編の感想で、ネタバレあり


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映画「Song of the sea」

今年はアニメ映画は豊作揃いで、「この世界の片隅に」と並ぶ傑作です。
今年と言うくくりすらいらないかもしれない。
多くの人に観てもらいたいです。

予告で美しいアニメーションと音楽に惹かれました。


ソング・オブ・ザ・シー 海のうた 公式サイト

あらすじ

母からたくさん歌やお話を聞いて育った兄ベンは、妹シアーシャの誕生を機に海へ姿を消した母を妹のせいだと思っていじわるをしてしまいます。言葉の話せないシアーシャ6歳の誕生日に光に導かれるまま妖精のコートを見つけ、海へ入っていきました。母のようにどこか消えて行ってしまうと思った父はコートを海に捨て、兄妹二人は嫌々おばあさんのいる都会に引っ越すことに。

ハロウィンの日、我が家に帰りたくて飛び出した兄妹は妖精と出会い、母から聞いた伝承と忘れ形見の貝笛を頼りに兄妹の冒険が始まります。

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映画『レッドタートル』 自然の中の感覚

 
予告を見てその美しさと雰囲気にこれは観ておかねば、と思った。
ガラガラの劇場でゆったり静かに鑑賞するのはこの上ない贅沢であった。

セリフのないこの映画に文字で感想を書くのも野暮にも思える。
が、書かないことには気がすまない。

ただ風の音が聞こえる。嵐の音だ。

どこの国の人でどの時代さえもよく分からない男が無人島に流れ着く。
平面の島ではない。少なくともサンゴ礁でできた島ではない。
高さや岸壁があるから、火山島が隆起して沈下したのだろうか。
竹林がある。温暖なのだろう。
飲水があり、食糧には困らなそうだ。

徐々に色彩を失う夕日、夜の描写が美しい。
目が簡略化された顔からは表情は読み取りにくい。
顔がアップで描写することも少ないので表現は体の動きから伝わる。
動きがところどころコミカルなカニが面白い。


以降ネタバレ

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レヴェナント 恩讐の彼方にあるのは…

まずPV見て、自然光の美しさに惹かれた。撮影監督がエマニュエル・ルベツキと聞いて納得。



同じルベツキの『ゼロ・グラビティ』は以下のシーンや最後のシーンもとても良かった。

『バードマン』の長回しも舞台のようでとても良かった。

そして、レヴェナントはほぼ自然光による撮影長回しも健在でさらに磨きのかかった映像美にとにかく引き込まれた。特に冒頭のシーンは圧巻だった。


その映像美による外部の過酷で美しい自然と幻想的な内部の心情とあいまいに混じりあうマジックリアリズム的なイニャリトゥの作風がマッチして高い完成度を誇っていた。丁寧にじっくり作ってある。
ディカプリオとトム・ハーディの骨太な演技も見どころ。

映像だけでも傑作レベルなので映画館で観てほしい。
家の小さい画面だと魅力が半減する映画、迷ってるならぜひ。


坂本龍一の音楽は挑戦的で意図は分かるし悪くはないけど、ちょっと耳障りな時があって没入感を削ぐ時があったのでそこが少し残念。も少しアンビエント寄りのほうが好み。


※以降は完全なネタバレなのでぜひ映画を観てからご覧ください。
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